障子の張替え
年末に向けて、障子・ふすまの張替えのご依頼を多数いただいております。
今日は障子の張替えについてご説明していこうと思います。
◆
お預かりした障子、まずは埃やごみを丁寧に払い落とします。
普段、掃除がしにくい場所なため、
よくよく見ると、意外と汚れが溜まっています。

いきなり水拭きしたりすると、埃が水に溶けて
組子に染みこんでしまい、
張替え後の黄ばみ・変色の原因となりますので要注意です。
◆
続いて、既存の紙をきれいに剥がします。
組子に水気を加え、しばらく放置。




昔から障子を張る際に用いられてきた糊=澱粉糊を
使用して張られていれば、
写真のように、するするするっと紙が剥がれていきます。
水気を加えてすぐ剥がそうとすると、
固まった糊に水分が十分に行き渡っておらず
糊が緩んでいないため、組子に紙が残りやすくなりますので、
注意が必要です。
まれにDIYでボンドのような強力な化学糊を使って
障子紙が張られていることもあります。。
そんな時は、障子一枚の紙を剥がすのに、数時間かかることもあります。。
障子は、あくまで定期的な張り替えによるメンテナンスを前提に
作られた建具です。
DIYの際は、是非、張替えを見越した施工をお願い致します!
◆
さて、既存の障子紙を剥がした後、
組子に残った糊を、丁寧に削ぎ取ります。


古い糊が残っていると、
新しい障子紙を張った後、時間が経つにつれ
糊のアクが浮き出てきて、組子のところだけ、
黄ばみや変色が起こる原因となります。
◆
糊をこそぎ取った後は、ひたすら水拭き。


先述の通り、少しでも汚れが残っていると、
経年による変色の原因になりかねません。
とにかく丁寧に細部まで汚れを取ります。
◆
水拭きが終わったら乾かします。




しっっっかり乾かします。
雨の日や、湿度が高い日など、
古い障子紙を剥がして、乾燥が十分でない中、
新たな障子紙を張ると、アクが浮き出て変色します。
乾かし終わったら、組子に糊を付けていきます。
溜めず掠れず、適量で。
糊が付いたら、紙を張っていきます。




手漉きの障子紙の場合、一枚のサイズは2×3判と呼ばれ、
縦2尺(60㎝)×横3尺(90㎝)の紙を継いで張っていきます。
機械漉きの障子紙の場合は、ロール状になっているため、
継ぎ目なく張ります。


はみ出た紙をカットしたら、乾かして完成です。


◆
余談ですが、古いお宅によくある話で、
以前は障子を外して、自分で張り替えていたけれど、
経年で障子が外せなくなり、張替えが出来なくなった、
というお話し、たまにあります。
木造住宅ですと、年月とともに家全体が傾いたり、
2階の重みで鴨居が下がってきたり、といった原因が考えられます。
そんな場合は、ジャッキを使って鴨居を押し上げて、
障子を外せますのでご安心ください。
外した障子は、スムーズに外せるように寸法を詰めます。



あとは、障子の組子が折れてしまっているお宅も
よくお見掛けします。
折れた部分が紛失している場合は、
木を足して、接着剤でくっつけます。




これでまた綺麗に紙が張れます。
◆
障子の張替えについて、お分かりいただけたでしょうか。
ちなみに、これまでご紹介してきた障子の写真は、
いずれも木製の骨でしたが、
最近の戸建てや、マンションの場合、
アルミ製の障子が入っていることも少なくありません。
木製に比べて、骨が折れたりすることはなく耐久性に優れています。
その代わりに、縦横の骨の本数が、木製に比べて少ないことが多いです。
このタイプの障子の場合、そのまま張り替えようとすると、
外周の糊代部分が狭かったり、段差があったりして、
うまく張ることができません。
アルミ製障子は、外枠と組子部分が別体になってますので、
必ず、外枠を外して、組子のみにして紙を張るようにします。


この外枠の外し方も、メーカー等によって仕組みが様々なので注意が必要です。
◆
障子の張替えの注意点は、
「経年による黄ばみ・変色を起こさぬよう気を付ける」、これに尽きます。
最近はyoutubeなどで、張替えの解説動画も数多く出ており、
ホームセンターで材料や道具を揃えれば、
ある程度簡単に、綺麗に張替えをすることができます。
障子を張ること自体は、それほど難しいことではありません。
ただ、張替え直後のきれいな状態をどれだけ長く維持できるか、
ということになると、なかなか簡単ではありません。
先述のように、いろいろな原因が複雑に絡み合って、
黄ばみ、変色が起きます。
もちろん、昔のご家庭のように、毎年障子の張替えを
していれば、綺麗な状態を維持できますが、
せっかくお金と手間をかけて張替えをするのであれば、
なるべく長い期間、そのままでいられるのが理想ですよね。
ご自身で張替えする場合はもちろん、
プロに頼む場合も、その会社がどのような作業をされるか、
是非確認の上、ご依頼ください。
◆
ここからはおまけで、最近 張替えをした事例のご紹介です。
◆
1例目。
張替えではなく、新規の障子製作の事例です。
最近のお宅の障子の木部は大半がスプルースという、安価で入手でき、加工も容易な輸入木材です。
伝統的な障子の骨は、杉や檜、などで作られているケースが多く、やはり時間の経過とともに、
木材の味というか、風合いが出てきます。
既存のスプルース障子から、檜障子への作り替えを
希望されるお客様もいます。
そんなお客様のご依頼で檜の障子を製作した事例です。
木目がとても綺麗です。
障子紙も、楮を原料とした高級和紙を使用しました。


◆
2例目。
以前のブログでもご紹介しました、
新築のお宅の障子です。
組子をランダムにしたり、
複数の紙を張り分けた障子にすることで、ちょっと変わった空間にすることもできます。



◆
3例目。
「ワーロンシート」での張替えです。
和紙を塩化ビニール樹脂で両面からラミネートした素材「ワーロンシート」を
張った事例です。
紙のように破れることがなく、耐久性に優れています。
いろいろな種類があるのですが、天然の靭皮繊維を混ぜて漉いた風合いのものを
ご指定いただきました。

◆
4例目。
3例目と同じお宅です。
前述のワーロンシートは、通常の障子紙とは異なり、
表面がラミネート加工されていることにより、
通気性がありません。
そのため、断熱効果が紙に比べて高いと言えます。
そんなワーロンシートを贅沢にも両面張りしました。



太鼓張りと呼ばれる張り方に近い仕立てです。
通常の片面張りの障子と比較した科学的なデータはありませんが、
確実に断熱効果は高いと思います。
◆
一言で張替えと言っても、
安価な機械漉き障子紙、
破れにくい加工がされた障子紙、
手漉き和紙と同じ原料(楮)を使用した機械漉き障子紙、
手漉き障子紙、
ワーロンシート、
というように、様々な紙の種類があります。
せっかく張り替えるなら、
「2~3年でまた張替えないといけないのは嫌」、
「ちょっとこだわりのある障子にしたい」、
そんなお考えがありましたら、
是非、当店にご相談ください。
◆
◆
障子の張替えの詳細はこちらもご覧ください。
障子張替えのお仕事の流れはこちらもご覧ください。