障子の張替え

年末に向けて、障子・ふすまの張替えのご依頼を多数いただいております。

今日は障子の張替えについてご説明していこうと思います。

お預かりした障子、まずは埃やごみを丁寧に払い落とします。

普段、掃除がしにくい場所なため、

よくよく見ると、意外と汚れが溜まっています。

いきなり水拭きしたりすると、埃が水に溶けて

組子に染みこんでしまい、

張替え後の黄ばみ・変色の原因となりますので要注意です。

続いて、既存の紙をきれいに剥がします。

組子に水気を加え、しばらく放置。

昔から障子を張る際に用いられてきた糊=澱粉糊を

使用して張られていれば、

写真のように、するするするっと紙が剥がれていきます。

水気を加えてすぐ剥がそうとすると、

固まった糊に水分が十分に行き渡っておらず

糊が緩んでいないため、組子に紙が残りやすくなりますので、

注意が必要です。

まれにDIYでボンドのような強力な化学糊を使って

障子紙が張られていることもあります。。

そんな時は、障子一枚の紙を剥がすのに、数時間かかることもあります。。

障子は、あくまで定期的な張り替えによるメンテナンスを前提に

作られた建具です。

DIYの際は、是非、張替えを見越した施工をお願い致します!

さて、既存の障子紙を剥がした後、

組子に残った糊を、丁寧に削ぎ取ります。

古い糊が残っていると、

新しい障子紙を張った後、時間が経つにつれ

糊のアクが浮き出てきて、組子のところだけ、

黄ばみや変色が起こる原因となります。

糊をこそぎ取った後は、ひたすら水拭き。

先述の通り、少しでも汚れが残っていると、

経年による変色の原因になりかねません。

とにかく丁寧に細部まで汚れを取ります。

水拭きが終わったら乾かします。

しっっっかり乾かします。

雨の日や、湿度が高い日など、

古い障子紙を剥がして、乾燥が十分でない中、

新たな障子紙を張ると、アクが浮き出て変色します。

乾かし終わったら、組子に糊を付けていきます。

溜めず掠れず、適量で。

糊が付いたら、紙を張っていきます。

手漉きの障子紙の場合、一枚のサイズは2×3判と呼ばれ、

縦2尺(60㎝)×横3尺(90㎝)の紙を継いで張っていきます。

機械漉きの障子紙の場合は、ロール状になっているため、

継ぎ目なく張ります。

はみ出た紙をカットしたら、乾かして完成です。

余談ですが、古いお宅によくある話で、

以前は障子を外して、自分で張り替えていたけれど、

経年で障子が外せなくなり、張替えが出来なくなった、

というお話し、たまにあります。

木造住宅ですと、年月とともに家全体が傾いたり、

2階の重みで鴨居が下がってきたり、といった原因が考えられます。

そんな場合は、ジャッキを使って鴨居を押し上げて、

障子を外せますのでご安心ください。

外した障子は、スムーズに外せるように寸法を詰めます。

あとは、障子の組子が折れてしまっているお宅も

よくお見掛けします。

折れた部分が紛失している場合は、

木を足して、接着剤でくっつけます。

これでまた綺麗に紙が張れます。

障子の張替えについて、お分かりいただけたでしょうか。

ちなみに、これまでご紹介してきた障子の写真は、

いずれも木製の骨でしたが、

最近の戸建てや、マンションの場合、

アルミ製の障子が入っていることも少なくありません。

木製に比べて、骨が折れたりすることはなく耐久性に優れています。

その代わりに、縦横の骨の本数が、木製に比べて少ないことが多いです。

このタイプの障子の場合、そのまま張り替えようとすると、

外周の糊代部分が狭かったり、段差があったりして、

うまく張ることができません。

アルミ製障子は、外枠と組子部分が別体になってますので、

必ず、外枠を外して、組子のみにして紙を張るようにします。

この外枠の外し方も、メーカー等によって仕組みが様々なので注意が必要です。

障子の張替えの注意点は、

「経年による黄ばみ・変色を起こさぬよう気を付ける」、これに尽きます。

最近はyoutubeなどで、張替えの解説動画も数多く出ており、

ホームセンターで材料や道具を揃えれば、

ある程度簡単に、綺麗に張替えをすることができます。

障子を張ること自体は、それほど難しいことではありません。

ただ、張替え直後のきれいな状態をどれだけ長く維持できるか、

ということになると、なかなか簡単ではありません。

先述のように、いろいろな原因が複雑に絡み合って、

黄ばみ、変色が起きます。

もちろん、昔のご家庭のように、毎年障子の張替えを

していれば、綺麗な状態を維持できますが、

せっかくお金と手間をかけて張替えをするのであれば、

なるべく長い期間、そのままでいられるのが理想ですよね。

ご自身で張替えする場合はもちろん、

プロに頼む場合も、その会社がどのような作業をされるか、

是非確認の上、ご依頼ください。

ここからはおまけで、最近 張替えをした事例のご紹介です。

1例目。

張替えではなく、新規の障子製作の事例です。

最近のお宅の障子の木部は大半がスプルースという、安価で入手でき、加工も容易な輸入木材です。

伝統的な障子の骨は、杉や檜、などで作られているケースが多く、やはり時間の経過とともに、

木材の味というか、風合いが出てきます。

既存のスプルース障子から、檜障子への作り替えを

希望されるお客様もいます。

そんなお客様のご依頼で檜の障子を製作した事例です。

木目がとても綺麗です。

障子紙も、楮を原料とした高級和紙を使用しました。

2例目。

以前のブログでもご紹介しました、

新築のお宅の障子です。

組子をランダムにしたり、

複数の紙を張り分けた障子にすることで、ちょっと変わった空間にすることもできます。

3例目。

「ワーロンシート」での張替えです。

和紙を塩化ビニール樹脂で両面からラミネートした素材「ワーロンシート」を

張った事例です。

紙のように破れることがなく、耐久性に優れています。

いろいろな種類があるのですが、天然の靭皮繊維を混ぜて漉いた風合いのものを

ご指定いただきました。

4例目。

3例目と同じお宅です。

前述のワーロンシートは、通常の障子紙とは異なり、

表面がラミネート加工されていることにより、

通気性がありません。

そのため、断熱効果が紙に比べて高いと言えます。

そんなワーロンシートを贅沢にも両面張りしました。

太鼓張りと呼ばれる張り方に近い仕立てです。

通常の片面張りの障子と比較した科学的なデータはありませんが、

確実に断熱効果は高いと思います。

一言で張替えと言っても、

安価な機械漉き障子紙、

破れにくい加工がされた障子紙、

手漉き和紙と同じ原料(楮)を使用した機械漉き障子紙、

手漉き障子紙、

ワーロンシート、

というように、様々な紙の種類があります。

せっかく張り替えるなら、

「2~3年でまた張替えないといけないのは嫌」、

「ちょっとこだわりのある障子にしたい」、

そんなお考えがありましたら、

是非、当店にご相談ください。

障子の張替えの詳細はこちらもご覧ください。

障子張替えのお仕事の流れはこちらもご覧ください。

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