表具と言うのは、裂地や紙などを糊で張り合わせて、掛軸・巻物・額・屏風・衝立・襖・障子などを仕立てることです。文化財の修復に携わるものもあり、技術職として繊細な作業を要求されることが必然的に多くなります。ここでは、表具店の役割や行っている内容についてお伝えします。

そもそも表具師の歴史とは?

表具について

東洋古典絵画の多くは、絹や紙などの素材に描かれており、補強を行う必要があります。日本では、中国や朝鮮半島からの絵画技法導入で表装技術が紹介されて、日本画と共に継承され発展してきた歴史を持っています。表装技術と言うのは、絵画装飾、補強、保存など、これらの配慮が一体となった知恵のある技術と言えます。東洋古典絵画では、作品や表装の劣化を予防するために、約100年~200年の周期を目安に定期的な修理が行われており、今日まで継承されてきています。そのことからも分かるように、表具の保存と継承を行うためには表装修理の技術が必要不可欠となります。

歴史について

表具師の仕事と言うのは、仏教伝来と同時に中国から伝わったもので、芸術や宗教が盛んな京都を中心に発展してきた歴史があります。その歴史は、奈良時代や平安時代から始まっており、仏教が盛んな時代であったことから、主に、教本を巻物にしたり、仏画や書を掛軸にして飾ったりすることを仕事としていました。その後、床の間文化が発達していったことから掛軸や屏風が世に広まっていき、表具師の仕事も世の中に定着していく中で、襖や障子の仕立ても表具師の仕事となっていきました。また、茶室の壁装から発展し、現代では部屋の内装全般を仕事とする表具師もいます。

表具師とは?

表具師の役割について

表具師は、紙・布・糊を使用して掛軸や屏風や額などを仕立てたり修理したりする職人です。皆さんのご自宅にも、掛軸・屏風・額などがあったりしないでしょうか?例えば、掛軸と言うのは、絵や書の周りが布や紙で装飾されていますよね。絵や書をそのまま飾っても場に映えません。そこで、表具師がその絵や書の周りを装飾することによって、より美しい掛軸に仕上げます。これを表装と言い、表具師の仕事とは本来、芸術品を扱う仕事が主でした。また、古くなってしまい劣化した作品であっても、表具師の繊細な仕事によって修復することができます。このように表具師の仕事と一言で言っても幅が広く、例えば、掛軸や屏風などの芸術的作品、古くから伝わる美術品修復、寺社仏閣の天井・壁の内装、襖や障子などの建具関連など、現在ではこれらはほぼ全て表具師の仕事となっています。

表具の素材と裏打ちについて

表具の世界では和紙と裂地が主な素材です。裂地と紙、或いは、紙と紙、これを糊で張り合わせる裏打ち作業が表具の世界では最も重要であり、熟練技術を要するものになります。天候や糊の加減によって、仕上がりが全く違う印象になるので、職人は細心の注意を払って丁寧に作業を行うことが求められます。

基本的な表具師の仕事とは?

・書や日本画を掛軸・額・屏風などに仕立てる

・傷んだ掛軸・額・屏風などを修復して新たに鑑賞や保存できるように仕立てる

・襖・障子などの仕立て・張替えをする

・和室・茶室などの壁装をする

主にこのような仕事に分けることができます。

・掛軸

昔から日本人は、四季折々の美しさを楽しむ文化があります。床の間を彩る掛軸もその一つで、例えば、梅雨時にはあじさいの掛軸を飾るなども、粋な日本文化を感じることができます。新規に表装することはもちろん、古くなって破損した、虫食いがある、シミが沢山あるなど、このような掛軸の修理や修復なども行います。また、最近は、マンションや新築の住宅に和室や床の間がないことも少なくないですが、洋風のリビングや玄関の壁などに掛けてもさまになるような、伝統的な掛軸形式にこだわらない創作表具についても、幅広く手掛けています。

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・額

紙や裂で表装して木縁を付けた和額、アルミなどの金物の縁がつく洋風額、厳密には額ではないですが縁のないパネル仕立て、の3つに大別されます。新たに額装することはもちろん、古くなった額を額装し直すこともできます。最近は、和額にも表面にアクリル板を入れたり、サイズを変えて仕立て直しするなども可能です。また、洋風額縁やパネルの仕立てであれば、和室でなくても、飾るお部屋にマッチした色、形、デザインで仕立てることが来ます。

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・屏風

屏風は、贅沢で高級なイメージがあるかと思います。最近は、一般家庭に屏風があることは、とても珍しくなりました。

屏風の折り畳み部分の機構を紙番(かみつがい、あるいは紙蝶番)と言うのですが、これは丈夫な和紙だからこそなせる技です。360°開閉することができ、金属や紐の蝶番とは異なり、隙間が殆どできません。本間屏風・枕屏風・風炉先屏風、二曲~六曲、等々、実に様々な種類とサイズの屏風製作・仕立て直しが可能です。最近は、モダンな柄の裂や紙をあしらって、現代の

空間にマッチした屏風を作ることも可能です。

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襖、障子

襖には、実に様々な種類があります。さらに、襖紙にも多くの種類があります。なので、襖を変えることで部屋の雰囲気もガラリと変化させることができるのが最大の魅力です。低価格のものから高級品まで幅広い価格のラインナップがあり、使用する用途に分けて襖を変えることができるのも魅力です。

和室に欠かせないものには障子もあります。長期間障子の張り替えをしていない場合、日焼けや汚れも次第に目立ってきます。是非、定期的な張替えをご検討ください。

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表具店(表具屋)と建具店(建具屋)、畳店(畳屋)は何が違うの?

・表具店と建具店の違い

これまでご紹介してきたように、表具店では障子や襖を取り扱っています。そして、障子や襖は建具屋さんのお仕事でもあります。どういうことかというと、建具屋さんは主に障子や襖の「骨」=木工部分を作る仕事で、表具店はその骨に障子紙や襖紙を張るという仕事です。なので一般的に、建具屋さんでは新規の障子・襖の制作はしても、張替えは対応していないことも多いです。また一方、表具店に新規の障子・襖の制作の依頼が来た場合、骨の制作は建具屋さんに依頼することになります。その場合、表具店の方で、現場の実測をし、張る紙に合わせて、どのような骨がふさわしいか判断し、建具屋さんに発注します。そのように旧来、骨・木工製作は建具屋さん、障子紙・襖紙を張るのは表具店と仕事の分担がなされてきました。もちろん近年では、障子紙・襖紙の施工に長けた建具屋さんもいらっしゃいます。障子・襖に関する張替え・新規製作の際は、是非、ご依頼先をよくご検討ください。

・表具店と畳店の違い

共に和室を扱うということでよく勘違いされますが、「障子・襖」を手掛ける表具屋と、「畳」を手掛ける畳屋さんは、扱う材料や技術的にも全く別の仕事です。近年、和室の減少に伴い畳屋さん、表具店は激減しています。そのためか、取扱業務を増やすために「畳」を扱う表具店、「障子・襖」を扱う畳屋さんも増えています。先述の通り、ご依頼にあたっては、是非その道のプロに発注いただけますよう、お願い致します。

・表具店と、建具店・畳店の一番の違い

先述の通り、建具屋さんは本来、障子・襖の木工部分やドア・窓などを扱う仕事。畳屋さんは文字通り畳を扱う仕事。ですが、近年その境が曖昧になってきていて、障子紙・襖紙を張る建具屋さん・畳屋さんも増えています。さらには、内装リフォーム会社についても障子・襖を取り扱っています。いったいどこに障子・襖を頼んだらいいのか。悩まれた場合、まずはその道のプロである表具店にご相談いただくのが一番だと思います。他業種の会社と比べて、現場実績・経験が圧倒的に多いので、ちょっと難しそうな要望もかなえることが出来たり、質の高い仕上がりが実現でき、施工後のトラブルも少ないです。では、障子・襖のお仕事を頼もうと思っている時に、どうやってその道のプロかどうか見極めたら良いか。当たり前ですが、店名に「○○表具店」もしくは「〇〇経師店」※を掲げているお店であれば、まず間違いはありません。また、店名に「表具・経師」がついていなくても、そのお店が、表具店の本来の業務である、掛軸・屏風・額・巻子等を取り扱っているか、がわかれば重要な判断材料になるかと思います。建具屋さん、畳屋さん、内装リフォーム会社がそれらを取り扱っていることはまずありません。障子・襖に比べて、技術的に難易度の高い掛軸・屏風・額・巻子等を取り扱っているお店であれば、障子・襖についても、充分に満足いただける仕上がりになることと思います。

※経師・・・表具師とは起源が異なりますが、現代では屏風や襖を扱う職人を意味し、表具と経師は同じような意味合いで使われることが多いです。

まとめ

ここでは、表具店についてお伝えしてきましたが、どんなことを行っている所かお分かり頂けたでしょうか。掛軸・額・屏風・襖・障子など、新規制作はもちろん、修理や修復のお仕立て直しでお困りの際には、是非、当表具店をご利用ください。綺麗にメンテナンスをして、美しい姿や状態を維持していきましょう。