新規製作

ご自身で書かれた書や画の作品はもちろん、

手ぬぐいやポスターなど既製品でお気に入りの紙・布も掛軸に

お仕立て出来ます。

また札所巡りの御朱印の掛軸へのお仕立ても承っております。

掛軸3

古い作品の仕立て直し

代々受け継いでいる掛軸の虫食いや汚れが目立つ、

皺や折れが出てしまった、

等々、お悩みがある場合はご相談ください。

修復

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掛軸のメンテナンスについて!!掛軸の仕立て直しの基礎知識!!

掛軸の管理やメンテナンス、みなさんはしっかりされていますでしょうか?仕立て直しをしようと思いつつも、そのままの状態で保管されている方も少なくありません。ここでは、掛軸のメンテナンスや仕立てに関する基礎知識をお伝えします。掛軸をお持ちの方、軸装をご検討中の方は是非、参考にしてください。

掛軸の管理で気を付けたいこと

保管の基本について

保管する際の基本として、まず掛軸は湿度の影響を受けやすい構造であることにご注意ください。ちょっとした事であっても傷みやすい性質を持っている非常にデリケートな工芸品です。なので、掛軸を取り扱う際には、決して濡れた手で触れないようにすることが大切です。雑に扱ってしまうとシミや折れ、ツレなどの原因に繋がります。

飾る際にも水滴や花粉・ほこりなどが付着しないように配慮することが大事です。少しの水滴や花粉でも影響するのかと疑問に思うかも知れませんが、ほんのわずかな付着であっても、長い年月をかけて徐々に掛軸の劣化は進行していきます。また、直射日光が当たる場所に飾ることも、日焼けの原因になりますので避けましょう。

掛軸を保管する場所にも注意が必要です。シミやカビなどを引き起こす原因にも繋がりますので、湿度の高い場所・風通しの悪い場所に飾ったり、保管したりするのは避けましょう。また、直射日光が当たる環境に飾ると、紫外線の影響で表面にヤケや変色が起こりますのでご注意ください。押入れの中に一年中入れっぱなしにするのも、よくありません。そのような場合は、必ず年に1~2回、天気が良く湿度が低い日に押入れから出して虫干しをするようにしましょう。その際は、折れや変色があったり、虫に喰われている箇所がないか、細部までチェックしてみてください。ちょっとでも異変を感じたら、まずはお近くの表具店にご相談されることをお勧めします。

乾燥について

掛軸は、エアコンの温風や冷風が直接当たらないよう配慮することが大切です。湿度が急激に変化すると掛軸の状態も変化します。湿度が高いことが掛軸に悪いからと、敢えて乾燥させることも避けましょう。異常に乾燥した環境も、掛軸にとって良い状態とはいえません。

汚れや折れ・傷について

掛軸に汚れをつけてしまった場合、ご自分で汚れを取ろうとはせず、専門の表具店にご相談されることをお勧めします。付着物や、浸透具合によって修復の仕方も様々です。ご自分で作業されて、結果的に掛軸の状態が悪化することもあります。掛軸を力を入れてきつく巻いたり、掛軸を落としてしまったりすると、それが原因となって折れや傷、皺などの原因になります。掛軸を飾る際には丁寧に扱うようにしましょう。

こうして、汚れたり傷ついたりして状態が悪くなり、飾ることができなくなった掛軸は、修理・修復が難しそう、プロに頼むと高額になりそう、といった理由で処分されてしまったり、押し入れや物置の奥に放置されてしまったりしがちです。汚れやシミ・皺などは、発見が早いほど修復が容易な場合も多くあります。まずはこのような兆候を見つけたら、お早めにお近くの表具店にご相談ください。

修理・修復の仕方も、文化財の修復のように手間と時間がかかるものから、簡易・安価に済ませるものまでさまざまあります。また、元のままの掛軸として復活させるのではなく、寸法を変えたり、使う裂を変えてリメイクしたりすることもできます。絵や書の部分だけを切り出して、屏風にしたり、額装やパネル表装にすることも可能です。汚れや傷を放置せず、早めに表具店にお持ち込みいただき、新たな活用方法を是非ご検討ください。

一般的な掛軸の仕立て直しの内容とは?

掛軸の仕立てについて

掛軸の仕立てには数多くの工程があり、完成までに3か月以上かかることはざらで、場合によっては1年以上かかることもあります。掛軸の仕立て、「表装」にあたっては、まず本紙となる画・書の作品をしっかりと鑑賞し、どのような作者が、どのような意図で制作した作品なのか汲み取ることに努めます。

作品を十分に理解出来たら、どのような裂(きれ)や寸法、かたちがふさわしいか吟味します。これを「取合せ」といい、これがうまくいかないと、「本紙が死んでいる」とか「表具が勝ってしまっている」というように、作品の魅力が十分に引き出せていなかったり、反対に作品の周りの裂が過剰に自己主張してしまったり、といった残念な状態になります。掛軸の善し悪しは取合せで決まる、と言われるほど大事な工程です。

掛軸は巻いて保管ができるようにするため、本紙は薄い紙や絹などである必要があります。ただ、そのままでは薄すぎて耐久性がなく、形状も安定しないので、「裏打ち」と言って、本紙の裏に薄くて丈夫な和紙を張る作業が必要です。本紙以外に、裂も同様に裏打ちを行います。最初の裏打ちを「肌裏(はだうら)」と言います。裏打ちはこの「肌裏」以外に、本紙や裂の厚みの調整を目的とした「増裏(ましうら)」、本紙と裂を切って継ぎ合わせた後に行う「中裏(なかうら)」、最後の仕上げに行う「上裏(あげうら)」と、工程の中で度々行う、とても重要な作業と言えます。

裏打ちを始めとして、掛軸の仕立ては、表具師の技量が仕上りに直結します。使用する和紙や裂の種類や厚み、糊の濃さ、をどう選択するか。また、それらは作業する季節・天候・湿度によって微調整する必要もあります。これに失敗すると掛軸の両端が反ったり、短期間で折れや皺、変色が起こる原因となります。このように掛軸の仕立ては、表具師の扱う仕事の中でも最も経験と勘を試される難しいものの一つと言えます。

掛軸の形について

優れた掛軸は、書や画を活かすことが配慮された裂や紙が、卓越した色彩感覚によって組み合わされ、それらが最適な寸法・形で仕立てられた芸術品であると言えます。
その掛軸の形は、一般的に「真・行・草」の3つのタイプに分類されます。真は「仏表装」とも言われ、仏画に用いられる形式です。行は最も一般的に用いられる形式で、「大和仕立」と言われることもあります。草は茶席の際に床の間に掛けることから「茶掛」とも呼ばれる形式です。
この3タイプ以外に、よりシンプルな表装である「袋表具」や、形式にとらわれない「創作表具」など、様々な形式があります。表具師は作品をよくよく吟味し、その題材や大きさ、飾る場所を考慮した上で、どの形式が最適か判断することが求められます。

掛軸の仕立て直し・修復について

墨・絵具の滲み止め・剥落止め

書画に使われている墨や絵具は、そのままでは滲んだり剥落するため、膠(にかわ)が接着剤として使われています。膠は動物の骨・皮を煮て濃縮し、冷やして固めたゼラチンを主成分とする物です。掛軸の仕立て直しの際は、本紙を湿らせる工程が何回かあるのですが、この時に環境や経年で劣化した墨や絵具が滲んだり、剥落したりすることがないよう、膠を水に溶いたもので、滲み止め・剥落止めを行います。近年は、化学薬品を使ったスプレータイプの滲み止めもあり、簡易な修復の際には、こちらを使用することもあります。

既存の裏打ち紙の除去

掛軸の本紙は、掛軸に仕立てられる過程で最低3回の裏打ちがされています。裏打ちをすることで本紙の厚みが増し、丈夫で形状も安定します。修復の過程では、この裏打ち紙を1枚ずつ剥がしていきます。特に本紙に接している肌裏(はだうら)と言われる裏打ち紙を剥がすのは、とても緻密さ・繊細さが要求される作業となります。重要なのは、既存の掛軸の仕立てに使われている紙と糊です。良質な和紙と、自然由来の糊で仕立てられていないと、裏打ち紙を剥がすことができない場合もあります。

欠損部分の修復

既存の本紙に虫食いや穴がある場合、その箇所をふさぐように修復します。欠損の形状や周囲の色味によって、どのように修復するかを決めます。

本紙の汚れの除去

「洗い」や「シミ落とし」と呼ばれる工程です。水や、場合によっては薬品を使って、本紙に付着した汚れやシミを除去します。ただ、汚れも含めて作品、というようなお考えの方もいらっしゃいます。掛軸が経年でまとった汚れ(=味?)を活かしつつ、仕立て直しをする方法もあります。

後世に残すために修理・修復は大切!

仕上がったばかりの掛軸は、その時は綺麗で美しく見えても、使用していく内にどうしても経年劣化していきます。そして、どんな和紙や糊が使用されているかで、その変化にも大きな差が出てきます。
小さな傷や汚れ、初期の傷みであれば、修理・修復が比較的簡単にできることもあります。また、古い作品の場合、見た目ではわからないところで劣化が進行しているケースも多々あります。
お家に代々伝わる思い入れのある作品や価値ある美術品・骨董品の場合、いかに今の状態を維持し後世に受け継いでいくか、というのはとても大事な問題だと思います。
そのような作品がお家にある場合、是非一度、お近くの表具店にご相談ください。

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