私(武笠敦史)の所属しております、表具師の有志団体、江戸表具研究会「表粋会」では、これまで隔年で掛軸の作品展を開催してまいりました。
特に2018年からは、「掛軸と絵画の未来展」と銘打ち、2018年・2020年・2022年の3回に渡り、
東京近郊の大学とコラボし、藝大生・美大生に掛軸用の画を描いてもらい、それを表粋会所属の表具師が掛軸に仕立て、
会場に展示する、という形式で開催をしてきました。
2022年に開催した「第3回 掛軸と絵画の未来展」では、それまでの過去2回の未来展の実績が認められ、公益財団法人三溪園保勝会との共同開催を実現しました。(三溪園保勝会は、実業家で茶人でもあった原三溪によって作られた日本庭園「横浜 三溪園」を運営する公益財団法人。)
そんな「掛軸と絵画の未来展」。3回の開催を経て、今回(2024年)は、より幅広い作品が集まる、制約の少ない作品展を目指しました。
名称は「掛軸の未来展2024」
「美大生・日本画」に限定していた過去と異なり、今回の未来展は一切の制約を取り払いました。
プロ・アマ問わず、日本画以外でも掛軸に仕立てる要件を満たせば、あらゆる作品を受付けました。
結果、ありがたいことに、今までの未来展よりはるかに多くの作品数、幅広い作風の作品が集まりました。
その中から、表粋会員が、自分がこの作品を仕立てたい!と思うものを選定し、
43の作品が掛軸となり、会場に展示されることになりました。
期間は2024年10月22日(火)~10月27日(日) 11:00~19:00(最終日は18:00まで)
会場は、銀座大黒屋ギャラリー6階です。
ご都合がつくようでしたら、是非ご高覧下さい。
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下記、過去の未来展の際にこのブログや、他の媒体に掲載した内容の再掲・再編集版です。なぜ、掛軸の未来展を開催するのか、その意図を記載しています。よろしければご覧ください。
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今回の展覧会のタイトルは「掛軸の未来展2024」。
私を含め多くの表具師は、まさに掛軸の『未来』に大きな危機感を抱いています。
若い方では、そもそも掛軸を見たことがない人が大多数。
なんとなく掛軸を知っている人に、掛軸のある空間をイメージしてもらうと、
大半の方の頭の中には、古き良き(?)日本の床の間が思い浮かぶことと思います。
もちろん、それはそれで良いのですが、
「掛軸が自分の部屋にあったらいいなあ」とはならないと思います。
それはおそらく、「掛軸のデザインが和室向き」だし、
「そもそも掛軸を飾る場所なんてない」ことが原因だと思います。
掛軸は自分の美意識、季節感、おもてなしの気持ちをあらわすのに最適なアイテムですが、今や絶滅の危機です。そんな掛軸文化復興のため、「掛軸の未来展」の開催に至りました。
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ほんの数十年前まで日本には、四季折々の催しに合わせて部屋の掛軸を掛け替える文化がありました。
来客に合わせて床の間にとっておきの掛軸を飾る文化がありました。
「家主のおしゃれ」=「掛軸」でした。
ところが今はどうでしょう。
新築のお宅で、床の間・和室がある家なんてほぼ無くなり、掛軸を所有する家も激減しました。
画家は、創作に際して制約の多い掛軸用の絵を敬遠する傾向にあります。
掛軸を仕立てる表具師は、需要の減少に伴い、廃業・転業が続出しています。
つまり、掛軸および日本の掛軸文化は今や消滅寸前です。
ただ、掛軸にはこんなメリットもあります。
◎保管に場所を取らない
巻いて保管できるので額と違い場所を取りません。
多種多様な掛軸を所蔵し、季節や来客の趣向など、用途に合わせて掛け替えることで、
空間の印象を一変させることができます。
◎持ち運びが簡単
巻いた状態はとてもコンパクトなので持ち運びが容易です。
友人宅に招かれた際にお気に入りの掛軸を披露したり、
花見やお茶会など各種イベントに持ち込んだり、日本文化に造詣の深い諸外国に大量に持ち込むこともできます。
◎古い掛軸も現代風への仕立て直しが可能
伝統的な工法で製作した掛軸は、定期的に修繕することで
半永久的に絵・書を保存することができます。
流行や好みに合わせて仕立てを変えることも出来るので、
古い作品でも現代風にアレンジして飾ることが出来ます。
ですが、私たち表具師が日頃、お客様に対して掛軸の魅力をアピールしようとしても、冒頭に書いたように、「我が家のインテリアにはそぐわない」とか「床の間がないから飾れない」というお言葉で拒絶されてしまいます。
でも、掛軸のデザインは、自由自在にアレンジが可能です。モダンな感じでも、レトロな感じでも。また、寸法や仕立て方を工夫することで、掛軸はリビングでも玄関でも子供部屋でも、あらゆるところに飾ることが可能です。
掛軸は掛けていなくても、あなたのお宅では、写真やポスターを入れた額や、お部屋の雰囲気に合わせたインテリアパネルが壁に掛っていたりしませんか?
掛軸は、そのような額やパネルとの競争に負けて、部屋から追い出されたと言えます。なので、部屋に飾りたいと思えるような掛軸があれば、再びお部屋を彩るものの選択肢の一つとして加えてもらえるのでは、と思います。
でも、いざどんな掛軸が購入できるか、ネットショッピングで検索をかけても、出てくる画像は、それこそ床の間以外では全く映えなさそうな古風な掛軸ばかり。これでは、いつまで待っていても状況は変わりません。状況を変えるには、現代の空間に合った新しい掛軸を制作していく必要があります。
ここで行きつく課題。我々表具師は、掛軸に仕立てる作品を制作する作家(画家・書家)さんがいなければ、新たな掛軸を作ることが出来ません。この課題を解決するために。表粋会では、作家さんに、自分の作品を掛軸という形態で遺したい、と思っていただくことが、掛軸・表具文化を未来に継承するにあたり、何より大切だと考えました。
なぜ、作家さんの中では、作品制作にあたり、掛軸という選択肢が無くなりつつあるのか。
日本画家さんの間では掛軸画ではなく、額やパネルを想定した描画の依頼が主流になってきていると聞きます。
掛軸に仕立てる場合の画は、薄い紙に、柔軟かつ剥離しない絵具で、かつ水気を入れても滲まないように描く必要があり、創作活動に様々な制約があります。一方、額やパネルに仕立てる場合は、紙の厚さや大きさ、絵具の濃さや重ね塗りを気にする必要がなく、軸画に比べて自由な表現が可能です。額やパネルを選択する画家が増えているのは、そのような理由もあるようです。
書道家さんの中には、展覧会などでの出展に際し、掛軸を選択することもあるようです。ただ、安価な機械表装が一般的となった弊害で、作品のまわりの裂地は、古風で無難なものが中心となっており、現代的な書作品の場合、取り合わせが難しい、という現状があります。結果、展覧会が終わった後は部屋に飾ったりすることはなく、箪笥の肥やしとなっている、というお話をよく耳にします。
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今回の未来展は、日本全国から、プロアマ問わず、年齢・国籍問わず、画・書・作風問わず、様々な方から、『あなたが掛軸にしたいと思う作品』というテーマで作品を制作いただき、ご応募いただきました。
この作品展は、作家さんの作品展であると同時に、表具師の作品展でもあります。集まった作品の中から、表粋会所属の表具師が、自らが掛軸に仕立てたいと思う(掛軸の未来を感じる)作品を選び、表具師的感性を以て掛軸に仕立てました。
(表粋会の掛軸お仕立ては、伝統的な手表装、正麩糊での作業を基本としています。)
通常のアート作品は作家が作品を制作し終えた時点で完成ですが、掛軸の場合は作家が作品を仕上げた後に、表具師が周りの裂地を選び、形や寸法を決め、仕立てを終えて初めて完成となります。いわば、作家と表具師との感性のコラボレーションです。
参加いただいた作家さんには、自身の作品が表具師の感性や技術を経て、どのような掛軸に昇華するのか、その面白みを感じていただき、是非、今後の創作活動において、掛軸を表現方法の一つとして加えてもらいたいと思っています。
そして、もう一つ大事なこと。
掛軸文化は、「掛軸を購入して飾りたい」、という方がいてこそ、未来へと継承していくことが出来ます。
今回の出展作品も、過去3回の未来展作品も、販売済のもの以外は購入可能ですので、もし気になる掛軸がございましたら、是非会場でお気軽にお問合せください。
