第3回 掛軸と絵画の未来展、出展作品のご紹介【後編】
前編からの続きです。
◆
第3回 掛軸と絵画の未来展への出展作品、
本紙周りの台紙張りまで完了しましたが、
考案したデザイン通りに裂を仕立てるにはどうしたら良いか。
とりあえず、裂を円形にカットするためのアクリル定規を発注。
大小2種、作りました。

通常、掛軸を仕立てる際は、本紙に近いところから裂を切り継いでいきますが、
今回はちょっと考えたらそれが不可能なことがわかったため、
PC上で作業手順を考えます。

こんな感じで裂を繋いでいけば何とかなりそうです。
最初からある青い裂が、「⑧完成」の時にはなくなっているのが
もったいなくてちょっとショックではあります。。
次に、この裂の繋ぎをするための下絵を描きます。
※真ん中の画はコピーです。

あとは、この下絵の位置に、繋ぐ裂と裂を重ねて、
円形アクリル定規で裁断、細い和紙で繋いでいきます。
切り損じると一発アウト、かつ悠長に作業していると
繋いだところがべにょべにょしてきそうなので、
慎重かつスピーディーに作業。
繋ぎ終わったら、早々に裏打ちして、仮張りに張り込みました。

数日 裂を乾かしたら、次の作業へ。
「本紙+台紙」を型に合わせて裁断。

「本紙+台紙」より一回り小さく「裂」をくり抜きます。

せっかく苦労して円形に切って、繋いで、したのに、
こんなに使わない部分があるなんて、もったいない。。
なんて、感傷に浸る間もなく、
いまだかつてなくやりづらーい糊止め(切断面のほつれ止め)を済ませ、
「本紙+台紙」と「裂」を繋ぎます。

そのまま上裏打ちへ。




軸袋と八双袋のところは、
白い福島絹を黒の染紙で裏打ちしたものを使ってます。
仮張りに張り込んだ状態で数週間乾かすと、
いよいよ最終工程。

円形定規を使って、外周をカットしていきます。
通常の掛軸でやる耳折は、形状的に不可能なので省略。
外周全てカットし終えました。

軸棒と八双を付けて完成です。

軸袋と八双袋が、裏からぐるっと表に回ってきて、
表の円形の裂の後ろに見える納まりにしました。
先述の、福島絹を黒の染紙で裏打ちしたものです。


ちなみにこの掛軸、
軸棒が短すぎて巻けないじゃないか、
巻いてしまったら、軸棒より先の裂が折れたりしそう、
と思われるかもしれません。
ですが、この「太巻き芯」を使えば、
安心してください、巻いてますよ!
こんな感じで、裂の先まで保護した状態で軸箱に収めることができます。
◆
会場で飾った様子がこちら。



◆
今回の掛軸は、
今まで当たり前にやっていた作業だけれど、
この掛軸には必要な作業がどうか。
今までやったことはない作業だけれど、
この掛軸には必要な作業かどうか。
をいちいち考えて制作しました。
結果的に、今まで見たことのない掛軸を作ることが出来たかなと
手前味噌ながら、思っています。
それもこれも、ひとえに今まで見たことのない画を
提供してくださった画家さんのおかげと、
感謝しております。
これからも当表具店では、
掛軸文化を未来に繋ぐべく、
挑戦を続けてまいる所存です。