第3回 掛軸と絵画の未来展、出展作品のご紹介【後編】

前編からの続きです。

第3回 掛軸と絵画の未来展への出展作品、

本紙周りの台紙張りまで完了しましたが、

考案したデザイン通りに裂を仕立てるにはどうしたら良いか。

とりあえず、裂を円形にカットするためのアクリル定規を発注。

大小2種、作りました。

通常、掛軸を仕立てる際は、本紙に近いところから裂を切り継いでいきますが、

今回はちょっと考えたらそれが不可能なことがわかったため、

PC上で作業手順を考えます。

こんな感じで裂を繋いでいけば何とかなりそうです。

最初からある青い裂が、「⑧完成」の時にはなくなっているのが

もったいなくてちょっとショックではあります。。

次に、この裂の繋ぎをするための下絵を描きます。

※真ん中の画はコピーです。

あとは、この下絵の位置に、繋ぐ裂と裂を重ねて、

円形アクリル定規で裁断、細い和紙で繋いでいきます。

切り損じると一発アウト、かつ悠長に作業していると

繋いだところがべにょべにょしてきそうなので、

慎重かつスピーディーに作業。

繋ぎ終わったら、早々に裏打ちして、仮張りに張り込みました。

数日 裂を乾かしたら、次の作業へ。

「本紙+台紙」を型に合わせて裁断。

「本紙+台紙」より一回り小さく「裂」をくり抜きます。

せっかく苦労して円形に切って、繋いで、したのに、

こんなに使わない部分があるなんて、もったいない。。

なんて、感傷に浸る間もなく、

いまだかつてなくやりづらーい糊止め(切断面のほつれ止め)を済ませ、

「本紙+台紙」と「裂」を繋ぎます。

そのまま上裏打ちへ。

軸袋と八双袋のところは、

白い福島絹を黒の染紙で裏打ちしたものを使ってます。

仮張りに張り込んだ状態で数週間乾かすと、

いよいよ最終工程。

円形定規を使って、外周をカットしていきます。

通常の掛軸でやる耳折は、形状的に不可能なので省略。

外周全てカットし終えました。

軸棒と八双を付けて完成です。

軸袋と八双袋が、裏からぐるっと表に回ってきて、

表の円形の裂の後ろに見える納まりにしました。

先述の、福島絹を黒の染紙で裏打ちしたものです。

ちなみにこの掛軸、

軸棒が短すぎて巻けないじゃないか、

巻いてしまったら、軸棒より先の裂が折れたりしそう、

と思われるかもしれません。

ですが、この「太巻き芯」を使えば、

安心してください、巻いてますよ!

こんな感じで、裂の先まで保護した状態で軸箱に収めることができます。

会場で飾った様子がこちら。

今回の掛軸は、

今まで当たり前にやっていた作業だけれど、

この掛軸には必要な作業がどうか。

今までやったことはない作業だけれど、

この掛軸には必要な作業かどうか。

をいちいち考えて制作しました。

結果的に、今まで見たことのない掛軸を作ることが出来たかなと

手前味噌ながら、思っています。

それもこれも、ひとえに今まで見たことのない画を

提供してくださった画家さんのおかげと、

感謝しております。

これからも当表具店では、

掛軸文化を未来に繋ぐべく、

挑戦を続けてまいる所存です。

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