表装内装作品展、賞をいただきました
2022年6月15日から21日まで開催されました、
(一社)東京表具経師内装文化協会主催の作品展
「第65回表装・内装作品展」に出展しました作品が、
「東京表具経師内装文化協会会長賞」をいただきました。


これを機に益々表具の道に精進してまいります。
そのようなわけで、今回はこの作品の制作過程をご紹介してまいります。
(別に知りたくないなんて言わないでください(笑))
◆
今回の作品はそもそも2020年5月の表装内装作品展に出展しようと思い、2年半前に制作を開始しました。
普段の表具ではあまり使わないカラフルな裂を探している中で、絞りの着物に行き着きまして、
安価で量を揃えられる「端切れ」で、様々な色・柄を集めました。





かなりの量の端切れが手元に揃ったので、
なるべくたくさんの色・柄で構成する作品を制作してみたくなりました。



かなり小さい端切れもあったので、一個一個のパーツは小さくすることにし、
かつ、絞りの質感を活かすためクッションを包んだ立体的なパーツで構成するパネルを制作することにしました。
と、ここで、立体表現のパネルの隣に、意匠を合わせた平面表現の掛軸があったら面白いかも、
と思い立ち、パネルと掛軸のセット展示にする計画に行き着きました。
さっそくPCでデザインを起こし、

パネル用のパーツをちまちま作り始めていたところで、コロナが発生し、2020年の作品展中止が決まりました。
そのまま数ヶ月は何も進まず、2021年になり、そろそろ制作を再開しようと思い、前年に作っていたパーツを眺めていたところ、
「既にこれだけパーツが出来てるのだから、もう一枚パネルを増やしても間に合うのでは?その方が見栄えがしそう」
という考えが頭をよぎり、PCでデザインを再考。

結局、パネル1枚あたりの寸法も大きくなり、枚数も2枚に。それに合わせて掛軸も寸法が大きくなりました。
そんな感じで、またパーツをちまちま作り、掛軸はほぼ最後(上裏打ち)まで作ったところで、2021年も作品展の中止が決定。。
またまた数か月の作業中断をはさみ、2022年。
まずは、掛軸を完成させ、

あとは、ふたたびパネルのパーツ作り。
夜な夜な作業し、設営日の1週間前になんとか全数完成。
さっそく設計図通りにパーツを並べてみます。

パネル1枚目。まあまあイメージ通りか。
続けてパネル2枚目も並べてみます。

んーー?なんか、、、違う。。
上下の色のグラデーションはイメージ通りなのですが、
左から右に徐々に黒になっていく感じが全然見えません。
とりあえず全部並べて、掛軸も置いてみます。

さらなる絶望。。。
左から右への黒の変化の曖昧さに加え、
左2枚のパネルと、右の掛軸が全然別物過ぎる。。
立体のパネルと、平面の掛軸のセット展示、とはいったものの、
ここまで別物感があると、セットにする意味が全くない。
2年半かけて作業してきて、今さらそんなことに気づくなんて。。
と、絶望してても始まらないので、
残り1週間でできそうなことを考えました。
まず、パネルの黒のパーツ。
一口に黒と言ってもいろいろな黒系(茶系含む)の裂を使っていたので、
それを一種類に限定。(写真左のものをやめて、右のものに置き換え。)

これで左から右への黒変化はだいぶ見えてきたのですが、
やはり掛軸との繋がりが不明。
そこで、立体から平面へ緩やかに変化する過程を見せられればと、
黒のパーツだけ造りを変えてみました。ひらべったく。

左のものから右のものへ変更。
これでパネルの方にも平面的な表現が入り、
かなり問題点が改善した感じです。

さらにもう一案。
今度は掛軸の方にも立体表現を入れられないかなと。
もちろん、掛軸である以上、巻いてしまえなければならないため、
付けたり外したりできるパーツ。
ということで、amazon大先生に相談し、
翌日届く磁石とスチールプレートを購入。
掛軸にも、パネルと同じ立体パーツをくっつけることができました。


そんなこんなで何とかギリギリ設営前日に納得いく作品にすることができました。
会場に展示した様子はこちら。



もう一点出展した、朝永賢弥さん作画の掛軸も隣に並んで展示されました。
(第2回掛軸と絵画の未来展の際に制作したものです。)


中断期間を挟みながらも2年半思案し、
結果的に会期直前まで手直しすることを余儀なくされましたが
その分思い入れのある作品になり、しかもその作品が
身に余る賞をいただけたこと、本当に光栄です。
この賞に恥じぬよう、引き続き精進してまいります。