裏打ちが「ぬける」
冬晴れで乾燥した日が続いていますね。
そんな日に、表具師が気にするのは、
「ぬける」ことです。
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「ぬける」とは?
裏打した作品がピンと張った状態になるように
乾かしている途中で、
乾燥によって「ぬけ」てしまい、
裏打ちした作品が、でろんでろんになってしまうことです。
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書や画といった作品を掛軸や額、屏風に仕立てる際、
まず、表具師は作品の裏打をします。
作品に霧吹き・刷毛等で湿り気を加え、

湿り気が紙全体に行き渡ったら、
紙の折れや皺が無くなるよう、刷毛でよく伸ばし
そこに、糊を付けた裏打紙を置き、刷毛で撫でて接着します。

いったんそのまま乾かしますが(敷き干し)、
それだと、湿って伸びている紙が、
乾くとともに勝手気ままに縮み、
くちゃくちゃの状態になります。
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そこで再度、霧を吹いて紙を伸ばしてやり、
今度は、紙の周囲に糊をつけて、仮張り板に張り込み、
乾かします。

こうすると、周囲の糊付けしたところが最初に乾き、固定され
その後、中央部が徐々に乾くとともに収縮することで
ピンと張った状態に仕上がります。
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なのですが、、極度に乾燥した日ですと
そううまくいかないことがあります。。
作品の周囲の糊が乾いて固定される前に、
紙の中央部が急激な乾燥で縮むことで、
周囲が引っ張られ、
仮張り板から剥がれてしまうのです。
これが「ぬける」です。
文章で説明するの、難しいですね。。
わかりづらくてすみません。。
百聞は一見に如かず。
恥ずかしながらぬけた状態をご覧ください。

※わかりやすいように特にひどい状態の写真です。
こうなったら、一度仮張り板から剥がし、
再度、紙を湿らせて、仮張り板に張り込みます。
ぬけたからといって、
作品を傷めたり、その後の仕上がりに影響が出たりすることは
ありませんのでご安心ください。
ただ、この「ぬける」時の音、
何度聞いても心がざわざわします。。
作業場の片隅から
「ピリッ・・・ピリッ・・・」という
表現が難しい小さな音が聞こえ始めたら、ぬける兆候。
しばらくすると「ぱっつん!」という乾いた音と共に、
ぬけます。
本当に表具師の心臓に悪い音です。
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乾燥した日は、加湿器などで作業場内の環境を整えつつ、
糊の濃さや、湿りの入れ具合など、
いつも以上に気を使って作業するよう努めます!