古糊の水換え
遅くなりましたが、
あけましておめでとうございます。
2019年もどうぞよろしくお願い致します。
さて、新年一発目の投稿は、
古糊の水換えについてです。
昨年、こちらの投稿でお伝えした
正麩糊(しょうふのり)を製作してから
早一年が経ちました。
寒空の下で時間をかけて炊いた糊を、
上の写真のような甕に入れて、
和紙で封をし、床下に一年間寝かせていました。
床下から取り出した状態がこちら。
この甕を毎年一回、大寒の時期に封を開けて、
上澄みのカビを取り、表面に水を継ぎ足したら、
また地下で一年間寝かせます。
さっそく封を開けて、甕を開きます。
が、あまりに衝撃的な見た目のため、自主規制・・。
あずき色をしたカビが一面を覆っていました。
ただ、見た目のわりに、
臭いはほとんどしませんでした。
このカビの色や臭いの状態は三者三様で、
同じ日に同じ釜で炊いた糊でも、
別の甕で一年間寝かすと
全く別の状態になるようです。
表面のカビを取り去った状態がこちら。
ここに水を足して、蓋をし、和紙で封をします。
また一年、地下で寝かせます。
こうしたカビの除去と水換えを繰り返すこと
5年~10年で、当初の糊の量から
だいぶ少なくはなりますが、
古糊と言われる接着力の弱い糊が
出来上がります。
糊というと、接着力が強い方が
良さそうな気がしますが、
掛軸の世界においては違います。
制作した掛軸を、数十年・数百年後に修復する際、
作品から裏打ち紙をきれいに剥がす必要が
あるためです。
そこで接着力の弱い古糊が
作品の裏打ちには最適というわけです。
また、古糊を使って裏打ちをすると、
しなやかで柔軟性のある仕上がりになるため、
掛軸を巻いて保存しても、
折れや皺が出にくくなります。
さて、来年はどんなカビが出ていることやら。
今から楽しみです。